講義内容
医療に機械学習を役立てるには、何を知っておく必要があるのか」…その手がかりを、臨床データと医療の現場から学びます。この講義は MIT で2019年の秋期授業として実施された「 Machine Learning for Healthcare ( 機械学習とヘルスケア )」の授業を翻訳し、日本語版字幕で学べるようにしたものです。大学院レベルの講義で、機械学習の手法を医療にあてはめるときに何が難しく、どう向き合えばよいのかを、全25回にわたって扱います。
この講義では、医療データの性質を理解したうえで、予測・診断・治療・発見・導入までの課題を順に学びます。たとえば以下のような内容が扱われます:
- 医療と臨床データを知る:医師の診療の流れ、ICUの患者データベースMIMIC、診断や検査のコード体系など、機械学習に入る前に押さえておくべき医療データの実態を確かめます。
- リスク予測と時系列データ:保険請求データからの2型糖尿病の発症予測、打ち切りを含むデータを扱う生存モデル、心電図による心房細動の検出などを扱います。
- 診療記録と医用画像:自然言語処理による診療記録の解析と、心エコー、病理画像、マンモグラフィへの深層学習の応用を紹介します。
- 因果推論と強化学習:観察データから治療の効果を推定する方法と、連続する治療の判断を最適化する方法を学びます。
- 病気の経過と精密医療:病気の進行のモデル化、サブタイプの発見、遺伝情報を使った精密医療を取り上げます。
- 臨床現場への導入と社会的な課題:臨床ワークフローの自動化、米国の規制、公平性、データセットシフトへの頑健性、モデルの解釈可能性を扱います。
医療と機械学習のどちらか一方を専門にする人にとっては、もう一方の分野の考え方に触れる機会になる講義です。医療データを扱う研究や仕事のなかで、手法を選び、結果を評価するときの判断の土台を得ることができます。
前提知識
- 機械学習の基礎(教師あり学習、ロジスティック回帰など)や、確率・統計、線形代数の知識があると理解がスムーズですが、なくても十分に学べる内容です。
- 医学の専門知識は不要です。必要な医療の背景は講義の中で説明されます。
受講対象者
- 医療・ヘルスケア分野で機械学習やデータ分析を活用したい方
- 機械学習を学んでいて、医療への応用に関心がある大学生・大学院生
- 医療機関や製薬・医療機器・保険などの業界でデータを扱う方
- 医療AIの可能性と課題を体系的に知りたい方
学習目標
- 医療データの種類と特徴、扱うときの注意点を理解する
- 医療の課題を機械学習の問題として定式化する考え方を身につける
- 予測、因果推論、強化学習、自然言語処理、画像解析など、課題に応じた手法の選び方を学ぶ
- 臨床への導入、規制、公平性、頑健性、解釈可能性といった実用化に向けた課題を理解する
講師
このコースの企画を中心となって進めたのが、MIT 電気工学・計算機科学科(EECS)の教授で、医用工学科学研究所(IMES)とコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)にも所属するデイビッド・ソンタグ(David Sontag)教授です。
ソンタグ教授は、機械学習と人工知能を医療に生かす研究を率いる研究者で、病気の進行のモデル化や因果推論を用いた精密医療、臨床で安全に使える解釈可能な機械学習などに取り組んでいます。MIT で博士号を取得し、その博士論文は MIT の計算機科学分野の最優秀博士論文に贈られるスプロウルズ賞を受けました。ニューヨーク大学の助教授を経て MIT に着任しています。 第1回の講義では、家族の病気の経験からこの分野に取り組む思いを語っています。
[ ソンタグ教授の研究室 ]
もう一人の講師は、MIT EECS のコンピュータ科学・工学の教授で、CSAIL の臨床意思決定グループを率いるピーター・ソロヴィッツ(Peter Szolovits)教授です。
ソロヴィッツ教授は1970年代から医師とともに研究を重ねてきた、医療情報学の草分けの一人です。医療の意思決定への人工知能の応用、診療記録から情報を取り出す自然言語処理、医療記録のプライバシー保護などに取り組んできました。米国医学アカデミーの会員で、2013年には医療情報学への長年の貢献に対してモリス・F・コレン賞を受けています。
講義では、医師がどのように考えて診療しているのか、臨床データにはどんな癖があるのかを、豊富な事例を交えて語っています。
[ ソロヴィッツ教授の研究室(GO ) ]
学習内容
「Part 1」では 01~08まで、「Part 2」では09~15まで、「Part 3」では 16~25までを学習します。Part 1
01) 医療データの独自性
02) 臨床ケアの概要
03) 臨床データの深堀り
04) リスク層別化(1)
05) リスク層別化(2)
06) 生理学的時系列データ
07) 自然言語処理(NLP)(1)
08) 自然言語処理(NLP)(2)
Part 2
09) 技術を臨床現場へ
10) 心臓画像への機械学習の応用
11) 鑑別診断
12) 病理学と機械学習
13) マンモグラフィと機械学習
14) 因果推論(1)
15) 因果推論(2)
Part 3
16) 強化学習(1)
17) 強化学習(2)
18) 病気進行モデルとサブタイピング(1)
19) 病気進行モデルとサブタイピング(2)
20) 精密医療
21) 臨床ワークフローの自動化
22) 米国における機械学習、人工知能の規制
23) 公平性
24) データセットシフトに対する堅牢性
25) 解釈可能性
- 分野
- AI、機械学習、ヘルスケア
- 前提となる知識
- とくになし
- 想定学習時間
- 11時間
- 修了認定テスト
修了証書発行 - なし
- オープンバッジ
発行 - なし
- 受講期間
- 期限なし
講師
デイビッド・ソンタグ( David Sontag )教授ピーター・ソロヴィッツ( Peter Szolovits )教授
翻訳ボランティア
謝辞
本コースの日本語翻訳にあたっては、広尾学園中学校・高等学校 インターナショナルコース有志のみなさんから、全面的なボランティア協力を頂きました。ここに厚く感謝申し上げます。
[チーム1]
安藤 美晴さん(**)、王 安琪さん、杉山夏蓮さん、竹川 梨穂さん、飛田 優美里さん、平松 利貴さん(***)、藤牧 唯壱さん、栁澤 瑠音さん(*)
[チーム2]
伊能 秀明さん、大原 彩加さん、上倉 綾太さん、河野 恒星さん、成田 香公さん(*)、フリッツ 柏良さん、山本 淳平さん
[チーム3]
伊東 杷紅さん、岩田 純麗さん(*)、岡田 英虎さん、小野寺 弘輝さん、木下 紗羅さん、佐藤 凜奈さん、羽柴 美姫さん、藤澤 まりあさん
[チーム4]
太田 雄也さん、千代田 美空さん、鶴岡 あいさん、中嶋 拓人さん、中山知優さん、成田 響生さん、西田 芽生さん(*)
[チーム5]
青木 クリスティーナさん、石川芽依さん、伊藤 開さん、小澤美咲(*)さん、木内 和奏さん、佐々木 亜莉亜さん、原 柊馬さん、渡邉 真理さん
[チーム6]
印藤 仁奈さん、大友 恵梨子さん(*)、工藤琉生さん、鈴木健太朗さん、中嶋 夕月さん、西浦芹菜さん、増田 宣太郎さん、吉田 尊雅さん
[チーム7]
大堀 晃さん、北口 貴一さん、澁谷 鞠亜さん、瀬々 楓さん、竹内塔子さん、中村優仁さん、羽坂豪太さん、李 穎多さん(*)
[チーム8]
江川 陸翔さん、江畑 遼祐さん、亀山 紗来さん、コックス エリーさん(*)、武川和生さん、廣實 真仁さん、前田 昊生さん
[チーム9]
梅田 幸樹さん、榎本 珠生さん、木村 直翔さん、新明 結さん(*)、中山結衣さん、福満昊青さん、宮崎大雅さん
[チーム10]
相原佳怜さん、秋山 美月さん(*)、海部 泰志さん、姜準さん、鈴木一成さん、西山 怜さん、増井 南々子さん
(***)は全体リーダー、(**)は高1リーダー、(*)はチームリーダー。
ご指導:植松久恵先生、神田先生
権利関係
Asuka Academy は MIT(マサチューセッツ工科大学)オープンコースウェアと日本で初めてのオフィシャルパートナーシップを締結し、サポートを受けています。MIT OpenCourseWare supports the efforts of Asuka Academy, which is an independent organization translating the materials through its own processes, with its own staff, using its own resources.
この講座はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で提供されています。
[MIT] 機械学習とヘルスケア
David Sontag, Peter Szolovits. Machine Learning for Healthcare. Oct 30, 2026. Massachusetts Institute of Technology: MIT OpenCouseWare, https://ocw.mit.edu/.
License: Creative Commons BY-NC-SA
MIT(マサチューセッツ工科大学)
1865年設立のアメリカの私立大学。さまざまな世界大学ランキングで常にトップクラスを占め、多数のノーベル賞受賞者も輩出しています。ハーバード大学とは3kmという近さ。https://web.mit.edu/
MITは世界ではじめてのOCWサイト(正規授業のWEB公開)を立ち上げており、20年以上にわたって膨大な学習コースを公開し、世界中の学習者に活用されています。くわしくは こちらのページ をごらんください。
https://ocw.mit.edu/index.html