講座内容
この講義は Yale 大学で2011年に実際に実施された「 PHIL 181 Philosophy and the Science of Human Nature (哲学と人間) 」の授業を収録したものです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて世界に無償公開されているもので、Asuka Academy がボランティアの協力を得て日本語翻訳字幕をつけています。
本講義では、プラトン、アリストテレス、エピクテトス、ホッブズ、カント、ミル、ロールズ、ノジックなどの哲学者の著作と、ジョナサン・ハイトやダニエル・カーネマンなどの現代の認知科学者の研究を対比させながら、人間の幸福、道徳、正義、社会構造といったテーマを深く掘り下げます。
大きな特徴は、伝統的な哲学的議論だけでなく、近年急速に発展してきた認知科学や進化心理学などの最新の学術成果を積極的に取り入れている点にあります。人間の行動や判断がいかにして形成されるのか、道徳的な価値観はどのようにして生まれ、発展してきたのかといった根源的な問いを、論理と実証の両面から探求します。
さらに、講義では、古典的な哲学書を単に読むだけでなく、それらを現代の社会問題や心理的傾向と結び付けて再解釈する視点が重視されます。たとえば、プラトンの『国家』を取り上げる際には、正義とは何かという抽象的な問題にとどまらず、現代における法や政治体制との関係にも踏み込みます。また、カントの道徳哲学を扱う際には、それが現代人の意思決定や倫理的ジレンマにどのように応用されるかを探ります。
このように、「人間の本質とは何か」「善く生きるとはどういうことか」「社会はどのように構築されるべきか」といった根本的な問いに、古代と現代の知の対話を通して挑んでいくのがこの講義の醍醐味です。
この講義は、哲学と科学の交差点に興味がある方、倫理や社会問題に関心がある方にとって、深い洞察を得る貴重な機会となるでしょう。
この講義は Yale 大学で2011年に実際に実施された「 PHIL 181 Philosophy and the Science of Human Nature (哲学と人間) 」の授業を収録したものです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて世界に無償公開されているもので、Asuka Academy がボランティアの協力を得て日本語翻訳字幕をつけています。
本講義では、プラトン、アリストテレス、エピクテトス、ホッブズ、カント、ミル、ロールズ、ノジックなどの哲学者の著作と、ジョナサン・ハイトやダニエル・カーネマンなどの現代の認知科学者の研究を対比させながら、人間の幸福、道徳、正義、社会構造といったテーマを深く掘り下げます。
大きな特徴は、伝統的な哲学的議論だけでなく、近年急速に発展してきた認知科学や進化心理学などの最新の学術成果を積極的に取り入れている点にあります。人間の行動や判断がいかにして形成されるのか、道徳的な価値観はどのようにして生まれ、発展してきたのかといった根源的な問いを、論理と実証の両面から探求します。
さらに、講義では、古典的な哲学書を単に読むだけでなく、それらを現代の社会問題や心理的傾向と結び付けて再解釈する視点が重視されます。たとえば、プラトンの『国家』を取り上げる際には、正義とは何かという抽象的な問題にとどまらず、現代における法や政治体制との関係にも踏み込みます。また、カントの道徳哲学を扱う際には、それが現代人の意思決定や倫理的ジレンマにどのように応用されるかを探ります。
このように、「人間の本質とは何か」「善く生きるとはどういうことか」「社会はどのように構築されるべきか」といった根本的な問いに、古代と現代の知の対話を通して挑んでいくのがこの講義の醍醐味です。
この講義は、哲学と科学の交差点に興味がある方、倫理や社会問題に関心がある方にとって、深い洞察を得る貴重な機会となるでしょう。
概要
入門的な題材が幅広く扱われていますが、大きなトピックは幸福と繁栄、道徳と正義、政治的正統性と社会構造の3つとなっています。
1. 幸福と繁栄(Happiness and Flourishing)
このテーマでは、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を中心に据え、人間にとって「良く生きる」とはどういうことかを考えます。アリストテレスは、人間の目的(テロス)は「エウダイモニア(真の幸福)」にあるとし、それは快楽的な満足ではなく、理性と徳をもって調和的に生きることにあると主張しました。
ここではこの古典的な視点に加えて、現代の心理学者ジョナサン・ハイトの『The Happiness Hypothesis』や、ポジティブ心理学の研究を参照しながら、幸福がどのように認知され、どんな条件下で実現されるのかを探ります。主観的な幸福と客観的な善との違い、文化による幸福観の差異、幸福と社会的連帯の関係などが議論されます。
2. 道徳と正義(Morality and Justice)
人はなぜ「善」を行うのか?道徳的な判断はどのようにして可能になるのか?このセクションでは、プラトンの『国家』やホッブズの『リヴァイアサン』、カントの『実践理性批判』などを通して、道徳や正義の根拠を探ります。
さらに、道徳心理学や進化的倫理学の視点も取り入れ、道徳的感情(共感、怒り、羞恥など)がいかにして人間の道徳判断に影響を与えるかを考察します。とくに、進化論的に道徳がどのように形成されたか、道徳的な直感と理性の関係、集団内での道徳規範の機能なども取り上げられます。
3. 政治的正当性と社会構造(Political Legitimacy and Social Structures)
社会はどのようにして成立し、正義を維持していくべきか。このテーマでは、ロールズの『正義論』とノジックの『アナーキー・国家・ユートピア』という、20世紀アメリカの代表的な政治哲学を中心に据えます。ロールズの「無知のヴェール」や「公正としての正義」といった概念を通して、公平な社会制度の構築について考え、ノジックの自由至上主義的批判との対話を通じて、個人の権利と国家の役割のバランスを考えます。
現代の政治や経済システム、社会的不平等や福祉政策との接点も多く、受講者にとっては哲学的な思考を日常生活や社会問題に応用するきっかけとなります。
入門的な題材が幅広く扱われていますが、大きなトピックは幸福と繁栄、道徳と正義、政治的正統性と社会構造の3つとなっています。
1. 幸福と繁栄(Happiness and Flourishing)
このテーマでは、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を中心に据え、人間にとって「良く生きる」とはどういうことかを考えます。アリストテレスは、人間の目的(テロス)は「エウダイモニア(真の幸福)」にあるとし、それは快楽的な満足ではなく、理性と徳をもって調和的に生きることにあると主張しました。
ここではこの古典的な視点に加えて、現代の心理学者ジョナサン・ハイトの『The Happiness Hypothesis』や、ポジティブ心理学の研究を参照しながら、幸福がどのように認知され、どんな条件下で実現されるのかを探ります。主観的な幸福と客観的な善との違い、文化による幸福観の差異、幸福と社会的連帯の関係などが議論されます。
2. 道徳と正義(Morality and Justice)
人はなぜ「善」を行うのか?道徳的な判断はどのようにして可能になるのか?このセクションでは、プラトンの『国家』やホッブズの『リヴァイアサン』、カントの『実践理性批判』などを通して、道徳や正義の根拠を探ります。
さらに、道徳心理学や進化的倫理学の視点も取り入れ、道徳的感情(共感、怒り、羞恥など)がいかにして人間の道徳判断に影響を与えるかを考察します。とくに、進化論的に道徳がどのように形成されたか、道徳的な直感と理性の関係、集団内での道徳規範の機能なども取り上げられます。
3. 政治的正当性と社会構造(Political Legitimacy and Social Structures)
社会はどのようにして成立し、正義を維持していくべきか。このテーマでは、ロールズの『正義論』とノジックの『アナーキー・国家・ユートピア』という、20世紀アメリカの代表的な政治哲学を中心に据えます。ロールズの「無知のヴェール」や「公正としての正義」といった概念を通して、公平な社会制度の構築について考え、ノジックの自由至上主義的批判との対話を通じて、個人の権利と国家の役割のバランスを考えます。
現代の政治や経済システム、社会的不平等や福祉政策との接点も多く、受講者にとっては哲学的な思考を日常生活や社会問題に応用するきっかけとなります。
講師
Tamar Gendler 教授

哲学、心理学、認知科学教授。
哲学の博士号をハーバード大学で取得し、シラキュース大学とコーネル大学で教えた後、Yale で哲学と認知科学の教授として教鞭をとり、2010年に Yale 哲学部門で初の部門長。2013年イェール大学教育賞。
Yale 大学の講師紹介ページ
2013年イェール大学教育賞受賞時のインタビュー
Tamar Gendler 教授

哲学、心理学、認知科学教授。
哲学の博士号をハーバード大学で取得し、シラキュース大学とコーネル大学で教えた後、Yale で哲学と認知科学の教授として教鞭をとり、2010年に Yale 哲学部門で初の部門長。2013年イェール大学教育賞。
Yale 大学の講師紹介ページ
2013年イェール大学教育賞受賞時のインタビュー
全体シラバス
本コースはPart1となります。
本コースはPart1となります。
Part 1
01. Introduction (イントロダクション) |
02. The Ring of Gyges: Morality and Hypocrisy (ギュゲスの指輪:道徳と偽善) |
03. Parts of the Soul I (魂を構成するもの I) |
04. Parts of the Soul II (魂を構成するもの II) |
05. The Well-Ordered Soul: Happiness and Harmony (秩序ある魂:幸福と調和) |
06. The Disordered Soul: Themis and PTSD (無秩序な魂:正義とPTSD) |
07. Flourishing and Attachment (繁栄と愛着) |
08. Flourishing and Detachment (繁栄と離脱) |
Part 2
09. Virtue and Habit I (美徳と習慣 I) |
10. Virtue and Habit II (美徳と習慣 II) |
11. Weakness of the Will and Procrastination (意志の弱さと先延ばし) |
12. Utilitarianism and its Critiques (功利主義と批判) |
13. Deontology (義務論) |
14. The Trolley Problem (トロッコの問題) |
15. Empirically-informed Responses (経験に基づく反応) |
16. Philosophical Puzzles (哲学パズル) |
17. Punishment I (罰 I) |
18. Punishment II (罰 II) |
Part 3
19. Contract & Commonwealth: Thomas Hobbes (契約と共同体:トマス・ホッブズ) |
20. The Prisoner's Dilemma (囚人のジレンマ) |
21. Equality (平等 I) |
22. Equality II (平等 II) |
23. Social Structures (社会構造) |
24. Censorship (検閲) |
25. Tying up Loose Ends (その他の内容) |
26. Concluding Lecture (最終講義) |
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講師
Tamar Gendler 教授(Yale)
Tamar Gendler 教授(Yale)
翻訳ボランティア
謝辞
本コースの日本語翻訳にあたっては、広尾学園中学校・高等学校 インターナショナルコース有志のみなさんから、全面的なボランティア協力を頂きました。ここに厚く感謝申し上げます。
[グループ1]
( 全体リーダー兼高3リーダー )井上 優奏 さん、 田邊 雛子 さん、石田 剛 さん、野田 奈夏子 さん、大泉 真優 さん
[グループ2]
( 全体リーダー兼高2リーダー )植田 佳恋 さん、小田川 綾花 さん、嶌嵜 翔也 さん、坂上 友亮 さん、佐々木 周 さん、小日山 璃音 さん
[グループ3]
( 全体リーダー兼高2リーダー )伊藤 優衣 さん、平野 きあら さん、二宮 泉水 さん、下山 皆 さん、磯部 祐人 さん、久野 翔平 さん
[グループ 4]
(グループ4リーダー)高橋 梨 さん、黒河内 理咲 さん、山内 美乃 さん、岡田 悠太郎 さん、曽我 侑悟 さん、橋本 昂星 さん
[グループ 5]
(グループ5リーダー)羽毛田 かれん さん、藤田 ゆり子 さん、荒木 洸輔 さん、工藤 海斗 さん、保坂 隆輔 さん
[グループ 6]
(グループ6リーダー)黒田 凜 さん、杉本 真克 さん、戸山 颯太 さん、沼田 賢人 さん、鈴木 爽馬 さん、石倉 柊真 さん
[グループ 7]
(グループ7リーダー)山本 詩織 さん、徳光 誠太 さん、メテナー 長濱 ラファエル さん、飯島 洋輔 さん、甲斐中 拓馬 さん
[グループ 8]
(グループ8リーダー)林沙有良 さん、山田 菜摘 さん、角田 莉々夏 さん、岩田 礼奈 さん、山田 えこ さん、仲澤 奈須香 さん
[グループ9]
(グループ9リーダー)長瀨 眞承 さん、ゴウチャン サミプ さん、伊藤 大悟 さん、小谷 一磨 さん、村松 誉斗 さん
[グループ10]
(グループ10リーダー)山内 彩生 さん、栗田 ひろか さん、佐野 美彩 さん、杉村 梨紗 さん、シエラ 璃砂 さん、(高1リーダー)番場 ありす さん
*学年は2018年度当時のものです。
ご指導:植松久恵先生(インターナショナルコースマネージャー)
謝辞
本コースの日本語翻訳にあたっては、広尾学園中学校・高等学校 インターナショナルコース有志のみなさんから、全面的なボランティア協力を頂きました。ここに厚く感謝申し上げます。

( 全体リーダー兼高3リーダー )井上 優奏 さん、 田邊 雛子 さん、石田 剛 さん、野田 奈夏子 さん、大泉 真優 さん
[グループ2]
( 全体リーダー兼高2リーダー )植田 佳恋 さん、小田川 綾花 さん、嶌嵜 翔也 さん、坂上 友亮 さん、佐々木 周 さん、小日山 璃音 さん
[グループ3]
( 全体リーダー兼高2リーダー )伊藤 優衣 さん、平野 きあら さん、二宮 泉水 さん、下山 皆 さん、磯部 祐人 さん、久野 翔平 さん
[グループ 4]
(グループ4リーダー)高橋 梨 さん、黒河内 理咲 さん、山内 美乃 さん、岡田 悠太郎 さん、曽我 侑悟 さん、橋本 昂星 さん
[グループ 5]
(グループ5リーダー)羽毛田 かれん さん、藤田 ゆり子 さん、荒木 洸輔 さん、工藤 海斗 さん、保坂 隆輔 さん
[グループ 6]
(グループ6リーダー)黒田 凜 さん、杉本 真克 さん、戸山 颯太 さん、沼田 賢人 さん、鈴木 爽馬 さん、石倉 柊真 さん
[グループ 7]
(グループ7リーダー)山本 詩織 さん、徳光 誠太 さん、メテナー 長濱 ラファエル さん、飯島 洋輔 さん、甲斐中 拓馬 さん
[グループ 8]
(グループ8リーダー)林沙有良 さん、山田 菜摘 さん、角田 莉々夏 さん、岩田 礼奈 さん、山田 えこ さん、仲澤 奈須香 さん
[グループ9]
(グループ9リーダー)長瀨 眞承 さん、ゴウチャン サミプ さん、伊藤 大悟 さん、小谷 一磨 さん、村松 誉斗 さん
[グループ10]
(グループ10リーダー)山内 彩生 さん、栗田 ひろか さん、佐野 美彩 さん、杉村 梨紗 さん、シエラ 璃砂 さん、(高1リーダー)番場 ありす さん
*学年は2018年度当時のものです。
ご指導:植松久恵先生(インターナショナルコースマネージャー)
権利関係
[Yale] 哲学と人間
Tamar Gendler, Philosophy and the Science of Human Nature
(Yale University: Open Yale Courses )
https://oyc.yale.edu/ (Aug 30, 2019) .
License:
Creative Commons BY-NC-SA
Terms of Use
この講座はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で提供されています。
[Yale] 哲学と人間
Tamar Gendler, Philosophy and the Science of Human Nature
(Yale University: Open Yale Courses )
https://oyc.yale.edu/ (Aug 30, 2019) .
License:
Creative Commons BY-NC-SA
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この講座はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で提供されています。

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